勝利を願う伝統柄―ラグビー日本代表ジャージにあしらわれた文様

日本で開催されているラグビーワールドカップ。
日本代表チームは史上初のベスト8入りを果たし、大いに盛り上がりました。

着物や日本文化が好きな方は、試合だけでなく日本代表のジャージにも視線を釘付けにされたのではないでしょうか。

「兜:KABUTO」がコンセプト

武士道は、人としての正義、勇気、思いやり、謙虚さ、誠実、名誉、忠義、この7つの道徳からなります。
兜は、武士にとって戦いの場で威厳や地位を誇示し、敵を威圧するとともに、自らの矜持と信念を表すものです。新たなコンセプト「兜:KABUTO」のもと、伝統的な和の意匠を取り入れながらデザインを一新した2019新ジャージには、こうした精神性と誇りが宿っています。
世界に挑む選手たちを鼓舞し、代表チームと一緒に戦う日本中の気持ちをさらに盛り上げるジャージです。

「カンタベリーオブニュージーランドジャパン」より
http://www.goldwin.co.jp/canterbury/japan_newjersey2019/

そう、ジャージに採用されたのは和柄!
日本代表を象徴する赤と白のストライプと、身体にフィットしたシェイプ、ぐっと精悍なイメージのジャージですよね。
それぞれのポジションの役割に合った織地と型紙を使うという凝ったもの。
「力・ならわし・縁起」の意味を込めた和柄で、勝利を祈願しているのです。

公式サイトには柄それぞれの解説がなかったので、目に留まったものについて挙げてみます。

  • 麻の葉(あさのは)
    神聖な植物とされた麻を模した文様。麻は丈夫で成長も早いため、魔除けと成長の願いを込めて子どもの産着などによく使われます。着物だけでなく、組み子細工など建築や工芸にもよく使われる文様です。
  • 立湧(たてわく)
    蒸気が立ちのぼるさまが吉兆とされたことから平安時代の衣裳に多く用いられた有職文様。中に雲や植物を配したものが多いのですが、ここでは菊を入れたのでしょうか。
  • 矢羽根(やばね)
    武士の象徴である弓矢、特に矢は一直線に飛んでいき勝利をつかむもの。矢羽根には鷹や鷲の羽を使うのが決まりごとなのだそうです。女性の柄のイメージが強い矢羽根文様ですが、矢は飛んでいったら戻ってこないので、江戸時代に「出戻り」をしないようにという願いを込めて嫁入りの着物などに使ったのが始まりだとか。
  • 紗綾型(さやがた)
    梵字である「卍」をつないだ文様。繁栄や長寿の象徴とされ、途切れることなく永遠に続くことを願う吉祥紋です。中国からやってきた紗綾という布に使われた模様だったため、この名で呼ばれるようになったそう。
  • 青海波(せいがいは)
    海の波を文様にしたもの。舞楽「青海波」の装束にあしらわれることからこう呼ばれます。寄せては返す波の連続性に未来永劫の意味を込めたとされます。
  • 菱型(ひしがた)
    縄文時代の土器にも既に見られ、平安時代には装束にも用いられたとても古い文様。菱形が4つ集まっているので「幸菱」でしょう。甲斐の武田家でも四菱が使われ、「武田菱」と呼ばれました。
  • 亀甲(きっこう)
    万年生きるという亀の甲羅の六角形に由来する文様。長寿を象徴する吉祥柄です。中に別の文様を組み合わせたものも多いですが、ここではシンプルにあしらわれています。
  • (さくら)
    日本が独自の文化を育みはじめた平安時代に「花」と称されるようになった、まさに日本を象徴する花。日本代表のエンブレムにもなっています。

武士たちは戦いに臨む際に、勝利や繁栄など、さまざまな願いを込めた文様を衣服にあしらい、身にまといました。
現代では着物を中心にその意匠が引き継がれていますが、特に男性の装いでは密やかに身につけられます。(婆娑羅や傾奇者は例外ですが……)
今回のジャージにも地紋として取り入れられていて、より日本らしい取り入れ方を踏襲していると感じました。

日本代表の最終戦となった対南アフリカ戦で初めて気づいたのですが、黒いヘッドギアも地紋入り!
それこそ兜のようで、身体を張って戦う選手たちにぴったり。
実に格好よかったです!!

練習着やスタッフ用のユニフォームに筆書きで「日本」とあったのもよかった。
大会全体に日本らしいものが配されていて、海外からの選手や観客の皆さんにも日本ならではの空気を感じてもらえたのではないでしょうか。

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